日本語小話

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今の一念――明日なんか来ると思わずに

今の一念

はじめに

 

ご機嫌よう!
漢検漢字教育サポーターで塾講師の有でございます。

近ごろ、藤井風さんの曲をよく聞いています。
新曲の「燃えよ」もとてもすてきです。

「燃えよ」に、次のようなフレーズがあります。

 

燃えよ
あの空に燃えよ
明日なんか来ると思わずに燃えよ

 

胸に刺さるフレーズです。

 

明日なんか来ると思わずに

 

実は今から700年ほど前の日本にも、
同じようなことを言った人がいました。

吉田兼好です。
誰もが一度はテストで名前を書いたであろう、あの吉田兼好です。
兼好法師と習われたかもしれません。

兼好は、鎌倉時代のお坊さんです。
徒然草」というエッセイを書きました。

兼好はその「徒然草」にこう書いています。

 

されば、道人は、遠く日月を惜しむべからず。
ただ今の一念、空しく過ぐる事を惜しむべし。
もし、人来たりて、我が命、明日は必ず失はるべしと告げ知らせたらんに、
今日の暮るゝ間、何事をか頼み、何事をか営まん。
我等が生ける今日の日、何ぞ、その時節に異ならん。

 

ざっくり現代語に意訳してみます。

 

だから、真剣に生きたいと思っている人は、
この先老いて死ぬまでの長い年月を惜しんではいけない。
そうではなく、ただ今この一瞬が、無駄に過ぎていくこと惜しむべきだ。
もし、今ここに人が来て、

「お前の命は、まちがいなく明日終わるぞ」

と私に告げたなら、
私は今から今日が終わるまで、何をよりどころにして、
何をして過ごすのだろうか。
私たちが生きている今日の日だって同じことだ。
明日にも死が迫っているかもしれない。
(だから明日があると思わずに、
今のこの一瞬を大事にしなさい)

 

おわりに

 

先延ばし癖がなかなか治らない私は、
反省しきりにこの文章を書いております。

今日が人生最後の日だとしたら、
あなたはいったい何をしますか?
何に命を燃やしますか?

 

ということで、
本日は「徒然草」の一節をご紹介しました。
読んでくださりありがとうございます。
それでは今日はこの辺で。
ご機嫌よう!