日本語小話

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兼愛(けんあい)ーー愛し合ってるかい?

兼愛

 

 

はじめに

 

ご機嫌よう!
 漢検漢字教育サポーターで塾講師の有でございます。

本日10月2日は、
マハトマ・ガンディーの誕生日にちなんだ、
「国際非暴力デー」です。

ガンディーは
インド独立にむけた活動において、
暴力に訴えることはありませんでした。
いわゆる「非暴力」です。
この「非暴力」物理的な暴力だけでなく、
相手を憎むという心理的な暴力も含まれます。

つまり、
「なんじの敵を愛せよ」
というやつです。

すなわち、

平和を実現するために必要なものは「愛」と
いえるかもしれません。

ということで、
今回は平和に関する
中国の思想書の言葉をご紹介します。

 

墨子

 

中国の戦国時代に生きた思想家の一人に、
墨子(ぼくし)という人がいます。
その墨子(ぼくし)の言葉を弟子たちがまとめた、
墨子(ぼくし)』という本があります。


墨子(ぼくし)は、
「先祖、親族を大事にするんだ!」という儒家孔子の教えを守る人たち)に対して、
「先祖、親族だけでなくみんなと愛し合えよ!」と主張した人物です。
この「他人と自分を区別せずに、みんなと愛し合おう」ことを、
「兼愛(けんあい)」と墨子(ぼくし)は言いました。

 

墨子(ぼくし)』の中から、
「兼愛(けんあい)」について分かりやすく説明されている部分を引用します。

 

故(ゆえ)に天下兼(か)ねて相愛すれば則(すなわ)ち治まり、
交(こもごも)相悪(にく)まば則(すなわち)ち乱る。
故(ゆえ)に子(し)墨子(ぼくし)曰(いわ)く、
「以(もっ)て人を愛するを勧めざるべからず」
とは此(こ)れなり。

 

(というわけで、世界中が自分と他人を分け隔(へだ)てなく愛し合えば
世の中は平和になるし、
互いに憎みあえば世の中が荒れる。
だから墨子先生がおっしゃった、
「他人を(分け隔てなく)愛することを勧めないわけにはいかない」
というのはこういうことなのだ。)
※かなり意訳をしております。

 

ここに引用した直前の内容は、
次の通りです。

世界中の人々が自分と他人を分け隔(へだ)てなく愛すれば、
他の国を自分の国のように愛するようになって
他の国に攻めていこうと考えなくなるし、
自分の家族と同じようによその家族を愛すれば、
家族同士のもめ事もなくなるし、
自分や自分の身内と同じように他人を愛せば
他人から物を盗もうとしなくなるし、
上司が部下を、部下が上司を自分の家族のようにあつかえば
上司と部下の関係は良くなるし、
もちろん親子関係だってよくなる。

こういった理論で、
「兼愛(けんあい)」によって平和になると
墨子(ぼくし)』には書いてあります。

この言葉を、
理想論と言う人もいるでしょう。
実際に、『墨子(ぼくし)』のなかには
「兼愛(けんあい)」を理想論だという人たちに対して
反論する箇所があります。

けれども、
戦国時代という戦争の絶えない時代に
このような考え方をした墨子(ぼくし)という人は、
間違いなく勇敢で偉大な人だと私は思うのです。

ガンディーもこう言っています。
「臆病な者は愛を表明することができない。
愛を表明するとは勇敢さのあらわれだ」

 

おわりに

 

いろいろとギスギスしている今日このごろ。
他人を自分と同じように愛する……ことができればいいのですが、
それも難しいですよね。
ですから私は、
勇気をもって少しだけ他人に歩み寄ってみようと思います。

以上、
「兼愛(けんあい)」
という言葉ををご紹介しました。


 読んでくださりありがとうございます。
 それでは今日はこの辺で。
 ご機嫌よう!