日本語小話

3分で読める日本語雑学

藍(あい)より青しーー青! 青! 青!

藍より青し

 

 

はじめに


ご機嫌よう! 
漢検漢字教育サポーターで塾講師の有でございます。

 

さて、
今年もノーベル賞の話題が出てくる時期になりました。

今から7年前、
2014年の今日10月7日も、
ノーベル賞の話題で持ちきりでしたよね。
青色発光ダイオードの研究で、
3名の方のノーベル賞同時受賞が決まったのが
この日でした。

ということで、
今回は「青」に関すること言葉をご紹介します。

 

青は藍(あい)より出(い)でて藍(あい)より青し

 

中国の戦国時代の終わりの思想家・荀子(じゅんし)の
思想をまとめた思想書
荀子(じゅんし)』です。
この本に、
次の一節があります。

青は、これを藍(あい)より取りて、
しかも藍(あい)より青し。

(青色の染料は、藍(あい)という草からとるが、
青色の染料はもとの藍(あい)の草よりももっと青い)

 

他の古典同様、
荀子』にも別バージョンがいくつかあります。
そのうちの一つでは、
「青は藍(あい)より取りて」ではなく、
「青は藍(あい)より出(い)でて」となっています。

 

このため、
「弟子が師匠よりも優れている」
という意味で、
「青は藍(あい)より出(い)でて藍(あい)より青し」
という言い方がされるようになりました。

 

付け加えると、
「青は藍(あい)より出(い)でて」を漢文風に
「出藍(しゅつらん)」
と言ったり、
「出藍(しゅつらん)の誉(ほま)れ」
と言ったりもします。

 

そして、
この文章の続きに、
「冰(こおり)は、
水これをなして、
しかも水より寒し」
というフレーズがあります。

そこから、同じく
「弟子が師匠よりも優れていること」を、
「氷は水より出(い)でて水より寒し」
とも言います。

 

ところで、
現代では
「師匠より優れている」
のところだけが
フォーカスして使われがちなこれらの言葉ですが、
元になった文章を読むと、
少々ニュアンスが異なるようです。

 

元になった文章では、
「先生より優れているからえらいんだ!」
ではなく、
「後から努力することで、
本来のあり方を変えることができる」、
つまり、
「自分を変えるために努力しなさい!
その努力の結果、
先生を超えるくらいになれるよ!」
という、
努力の大切さを説くための例として、
これらの言葉が使われています。

 

性悪説(せいあくせつ)

 

実はこの
「青は、これを藍(あい)より取りて、
しかも藍(あい)より青し」
というフレーズは、
荀子(じゅんし)』のなかの
「勧学(かんがく)」という章に書かれています。

「勧学(かんがく)」の冒頭を引用します。

 

「学は以(もっ)て已(や)むべからず」

(学ぶことをやめてはいけない)

 


この後に、
「青は~」と続くわけです。

ここで荀子(じゅんし)について
少しご紹介させてください。

人はもともと「善」なのか、
それとも「悪」なのか。

この問いは、
古今東西
人々の頭を悩ませています。

荀子(じゅんし)は、
「人の性質はもともとは『悪』なのだ!」
と主張した人です。

彼のいう「悪」というのは、
「悪い」ではなく、
「弱い」という意味です。

 

「人はもともと弱いから、
自分の欲望に負けたり、
周りの環境に流されて、
悪いことにも手を染めてしまう。
そうならないために、
我々は生きていくなかで
たくさん学んでいかなければならなし、
亡くなるまで学ぶことをやめてはいけない。
そうすることで、
人はようやく『善』になれるのだ」

 

ざっくりと言えば、
これが荀子(じゅんし)の考え方です。
そして、
荀子(じゅんし)によれば、
「善人」というのは、
「ものすごく努力して正しい行いができるようになった
すごい人」
なのです。

 

努力をすれば、
「善」になれる。

この考えが、
「青は、これを藍(あい)より取りて、
しかも藍(あい)より青し」からもうかがえます。

 

おわりに

 

以上、
「青は藍(あい)より出(い)でて藍(あい)より青し」
をご紹介しました。

読んでくださりありがとうございます。
それでは今日はこの辺で。
ご機嫌よう!