日本語小話

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涅(でつ)すれども緇(くろ)まず―― あなたは周りに染まりやすい?

涅すれども緇まず

はじめに

ご機嫌よう!
漢検漢字教育サポーターで塾講師の有でございます。

本日は9月6日。9(く)6(ろ)で「黒の日」そうです。
ということで、
今回は黒に関することを書きます。

涅(くり)

 

「黒」を広辞苑でひくと、次の一文が書いてありました。

 

「くら(暗)」と同源か。また、くり(涅)と同源とも

 

「くり(涅)」というのは、水底にたまった黒い土のことです。
「くろつち」とも読みます。

 

そういえば『BLEACH』という漫画に、
「涅(くろつち)マユリ 」というキャラクターが出てきましたね。
あの「くろつち」です。

 

話を戻して。
本日はこの「涅」という字が出てくる言葉をご紹介します。

 

涅(でつ)すれども緇(くろ)まず

 

「涅すれども緇まず」。
「でっすれどもくろまず」
と読みます。
中国の思想書論語』のなかの一節です。

 

直訳すると、
「(本当に白いものは)涅(くろつち)で黒く染めても黒くならない」。
※涅は染物の材料として使われたそうです。

 

本当に意志の強い者は、
どのような境遇に置かれてもブレたりしない。
悪い環境にいたり、悪い人とツルんでも、
自分は悪に染まらないという意味です。

 

あるとき孔子は、
悪いヤツに「部下にならないか」と誘われました。
孔子はその誘いに乗ろうとします。
弟子の子路(しろ)は驚いて孔子に言いました。

 

「先生は昔おっしゃったじゃないですか! 
 『立派な人は、悪いヤツに近づかない』って。
 ですのにどうして先生はそんな悪いヤツの所に行くんですか?」

 

それに対して、孔子は答えました。

 

「確かにそういった。
 だが、本当に固いものは、磨いても薄くならないというだろう?
 本当に白いものは、黒く染めても黒くならないというだろう?」

 

これはどういうことかというと、
私は「良い人間であろう」という意思が強いから、
悪いヤツとツルんでも悪には染まらまいのだ!
ということです。
さすが孔子。ものすごい自信です。
そこにシビれる、あこがれるゥ!

 

ちなみに、
結局孔子はその悪いヤツの部下にはならなかったようです。

 

それはともかく。
以上のエピソードから、
「涅(でつ)すれども緇(くろ)まず」は「悪い環境にいたり、悪い人とツルんでも、
自分は悪に染まらない」という意味で使われるようになりました。
「朱に交わっても赤くならない」ということですね。

私もそれくらい意思の強い人間になりたいものです。

 

おわりに

 

ということで、
本日は「涅(でつ)すれども緇(くろ)まず」
という言葉をご紹介しました。
読んでくださりありがとうございます。
それでは今日はこの辺で。
ご機嫌よう!