日本語小話

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中秋の名月――この月の月

中秋の名月

 

 

はじめに

 

ご機嫌よう!
漢検漢字教育サポーターで塾講師の有でございます。

昨夜のお月さまはまんまるで、明るくてとてもきれいでしたね。

十五夜の前日の月を「待宵(まつよい)の月」といいます。
満月が昇る翌日の「宵」を楽しみに「待つ」ことから
このように呼ばれます。

そして今夜は十五夜
きっと今日のお月さまも美しいでしょうね。

中国人も日本人も、昔から月
―――特に中秋の月を愛でる習慣がありました。

ということで、
今回は月に関する詩歌を3つご紹介します。

 

中秋の月

 

まずは中国の漢詩から。

 

「中秋の月」蘇軾(そしょく)

 

暮雲収め尽くして清寒溢れ
銀漢 声無く 玉盤を転ず
此の生 此の夜 長くは好からず
明月 明年 何れの処にて看ん

 

(夕暮れ。
雲がすっかりなくなって、
澄み切ってひんやりとした空気が満ちていて、
銀河には宝石でできたお盆のような中秋の月が
静かに昇ってきた。
この楽しい人生も、
この楽しい夜も
長くは続かない。
この名月を、
来年はいったいどこで見るのだろうか)

 

しんと静まり返った月夜の美しさ。
その美しさに思わずセンチメンタルになってしまったのでしょうか。
描写が美しいです。

 

この月の月

 


お次は日本の和歌です。

 

月月に月見る月は多けれど月見る月はこの月の月(よみ人知らず)

(毎月毎月、
お月さまをみることができる月は多いけれども、
鑑賞する価値のある月は/月を鑑賞するのにぴったりな月は
今月の月です/この月が出ている今月です)

 

解釈がいろいろと分かれるこの歌。
声に出して読んでみると軽快なリズムがいっそう楽しめるので、
ぜひお試しあれ。

 

名月を

 

最後は、小林一茶の俳句。

 

名月をとってくれろと泣く子かな(小林一茶

(「あのきれいなお月さまをとってよ」と
子どもがねだって泣いているよ)

 

「かわいい」の一言に尽きます。
子どもの無邪気さがかわいいです。
お父さんも思わず取ってあげたくなったことでしょう。

 

おわりに

 

以上、
中秋の名月を読んだ詩歌を3つご紹介しました。
今夜はぜひ空をながめて、
十五夜お月さまを見てみてくださいね。


読んでくださりありがとうございます。
それでは今日はこの辺で。
ご機嫌よう!

 

 


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